« まるでBL大河ドラマ | メイン | 今日のリュウケンドー »

妖怪マンガ~夏目友人帳と百鬼夜行抄~

「~帳」とつくと捕物帳とか忍法帳とか思い出してしまう私はやはり年が年だけに。
でもこの友人帳は白泉社で連載しているので少女マンガ。ジュンク堂で「試し読み」ができて即買いした本。
これは妖怪マンガ。祖母が名前を奪って拘束した妖怪たちに名前を返す不幸な少年の話だ。

妖怪マンガというと少女マンガの場合、どうしたって「百鬼夜行抄」と比べられてしまうだろう。
まず妖怪が似ている。似ているが独特の湿りけをもっている今さんの勝ち。
まあ今さんも鳥山石燕の絵を元に描いていると言っているが、そのものではなく、そこからイメージしているものと思われる。なにせ日本の妖怪はすべて水木しげるがもう、これ以上ないというくらい強い印象で描ききってしまったから、新しい妖怪を作るのもむずかしいだろう。

次に相棒。
夏目は招き猫に封印されていた「斑」という獣型の妖怪、百鬼は父親に化けている竜型の妖怪「青嵐」、どちらも主人公を守っているが、2匹とも主人公に忠誠を誓っているわけではない。
絵柄的にはネコ型妖怪はかわいく、青嵐は妖怪の怖さがある(普段はマヌケだが)。これは甲乙つけがたい。

しかし今さんと比べてよりよい、と言えるのが主人公だ。百鬼夜行抄の律も魅力的だが、実は律本人より回りの人間や妖怪たちの個性の方が毎回際立っている。律はだまってそんな人たちを見ているか、できれば関わりたくないという冷めた目で、極力傍観者を選んでいる。そんなキャラクターには感情移入しにくい。
それに対して夏目は積極的に妖怪や他人と関わろうとする。夏目の感動やせつなさはこちらに素直に伝わってくる。

あと夏目はストーリーが毎回頁内でおさまって余裕があるのもいい。今さんは貧乏性なのか、30Pでも50Pでも、たとえ120Pあったとしても毎回頁が足りない感じがする。与えられた頁の倍の情報量をいれようとするためだ。もういいかげん長く描いているのだからこのへんの頁配分はもう少し考えるべきではないだろうか。たくさん描いてもらってこっちは嬉しいし、今さんのサービス精神もわかるのだが、毎回なんかぎゅうっと詰め込んだ話になっている。
その点夏目は物足りなさを感じさせるくらい抜けている。コマもすかんと透けて必要なものしか描いていない。花ゆめ風の表情の少ない顔のUPの多用でもそれはたぶん今の風潮とあっているのだ。

夏目と百鬼で一番違うのは人と人にあらざるものの関係だ。夏目はふれあおうとし、わかりあおうとするが、百鬼はたがいの領域は侵さない方がいい、というスタンスにいる。
百鬼はときどき「えー、こういうオワリにするのか」と思うくらい人間に冷たい場合もある。なんでもかんでも許すわけではなく、ぱしりと一線を引かれてしまう。人間の勝手な思い込みで妖怪を味方にしたり敵にしたりはできない、分をわきまえろ、と。

どちらの捉え方も好きだ。違う作品だからどっちのスタンスが正しいというわけではない。
夏目は夏目の考え方でいってほしいし、百鬼も今のままでいっていいと思う。
妖怪ブームも落ち着いた今、単なる妖怪好きとしては両方とも長く続くといいと願う。

夏目友人帳 1 (1)
夏目友人帳 1 (1)緑川 ゆき

おすすめ平均
stars少しさみしい、少しうれしい。
stars胸に響く、妖怪たちの不器用な愛。
starsもう少し、評価されてもいい漫画家さんだと…
starsやっぱり最高
stars怖くて切ない

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
百鬼夜行抄 (13)
百鬼夜行抄 (13)今 市子

おすすめ平均
stars開さん大活躍!
stars一番好きなキャラは
starsいつまでも終わらないで
stars妖怪と人情と.
stars大変です

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.syu.sakura.ne.jp/ruta/blog/mt-tb.cgi/180

コメント (3)

こんにちは。
こちらのレビューで「夏目友人帳」を購入しました。
ついで、この作家さんが気に入って、ほかの漫画にも手を出してしまいました。
ご迷惑かと思いましたが、この記事にリンクさせて頂きました。
宜敷くお願い致します。

るた:

こんにちは。
おお、私のあんなほめてんだかけなしてんだかわからないレビューで……!
いや、好きな作品を共に語らえるのはいいですよね。
というわけで私ももちさまのレビューを読んで「学校怪談」文庫買おうかな、と。いや、単行本やっぱり持ってるんですよ。でもそんな読んでないものはいってるなんて……ひ、ひどい!
ところで早川から出ている「夢幻紳士」はもってらっしゃいますよね……。

Anonymous:

済みません。連続のコメントになります、もちです。
早川のお高い「夢幻紳士」持ってます。
この間「逢魔篇」が出ました。サブタイトルがほぼ妖怪の名前通り、妖怪色が濃い一冊です。
るたさまなら、全ての妖怪をご存知かもしれません。
ついで昔の「夢幻紳士 冒険活劇篇」の文庫も出てました。こちらにも書き下ろしが1本入ってて、泣く泣く買ってしまいました。他の所の持ってるにも拘らず。
ヨースケ先生商売上手いよ・・・。

コメントを投稿

About

2006年03月12日 02:43に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「まるでBL大河ドラマ」です。

次の投稿は「今日のリュウケンドー」です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。

Powered by
Movable Type