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カムパネルラの絶望

今日、相方と飲んでいるとき、人の幸せはそれぞれだから、という言葉から「銀河鉄道の夜」の話になった。確かあれにも「人それぞれの幸せはその人にしかわからない」というようなセリフがあった、と思う。
私は実は恥ずかしながら原作を読んでいないので、アニメの「銀河鉄道の夜」(あの猫の!)の話しとなるのだが、人のために命を落としたカムパネルラは幸せだったのか、という話しだ。


 「人の幸せのためならあの天上の蠍のように何回火に焼かれ
 たってかまわない」
 と言うカムパネルラは確かにザネリのために何も考えず冷たい
 水に飛び込んだのだろう、そして命を落としても満足だったに
 違いない。
 彼の心配はただ「おかあさんは僕を許して下さるだろうか」という一点だった。そこも客観視している。
 だが、ジョバンニは銀河の中に石炭袋を見た。
 ゴウゴウと音をたてて全ての光を飲みこむ石炭袋の中に絶対の孤独を見て、
 その恐怖と寂しさ、切なさからカンパネルラにほとばしるように声を上げる。
 「カムパネルラ、僕たち、どこまでもどこまでも一緒に行こうねえ」

その時、カムパネルラは突如として悟る。
僕は一緒には行けない!
天上で輝く火となっていたカムパネルラはこの瞬間地に堕ちる。人間の子供に戻る。
僕は一緒には行けない。
輝く未来にも家族と過ごす幸福も、友達と一緒にいる幸せももうかえらない。
天上にいたカムパネルラなら微笑んで「ごめんね、僕は一緒には行けないんだよ」と諭すことだろう。だが地に戻った少年は答えることができない。
僕は一緒には行けないんだ………。

自分の死を、孤独を、絶望を理解した少年はもうジョバンニと行くことができず消えるのみだった。
この車両にも、次の車両にもいないカムパネルラを探して最後尾に辿りついたジョバンニは、夜の中に寂しく消えていくカムパネルラを見る。ジョバンニに向けるカムパネルラの視線は石炭袋と同じ絶対の孤独の色を浮かべている。
可哀想なカムパネルラ! 天上で炎にもなれず、ジョバンニと共にいきることも出来ず、石炭袋のただ中で膝を抱えるカムパネルラ!

などという話しをだな、リースリングと一緒に語っていたわけだ。

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2004年05月15日 04:31に投稿されたエントリーのページです。

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