──人類が増えすぎた人口を宇宙へ送り出してからすでに半世紀が過ぎた
──あるいは──宇宙世紀0079、宇宙都市サイド3はジオン公国と名乗り地球連邦に
独立戦争を挑んだ──
これらの有名なナレーションで始まるアニメ・機動戦士ガンダム、
ファーストガンダムと後に呼び習わされるアニメが始まって24年。
いまだそのドラマ性は古びず、常に新しい感動を呼びつづけている。
何がはじまったかというと12月の土曜日3回にわたってTV放映されたファーストガンダムのマラソンオールナイトなのだ。
私がこのアニメに出会ったのはもうすでにけっこうな人格が確率されてからだったが、衝撃は激しかった。
こんなアニメ見たことないと思った。何処がどう違うのかわからなかったがはっきりと違うと思った。確実に何らかの影響は与えられていると思う。
池袋・新文芸座で毎回13話ずつ3週にわたってオールナイト上映されるガンダム、観客は意外と20代~30代の女性が多い。グループや二人づれも多い。もちろん男性客は半数以上占めたが、座席にはまだゆとりがあった。思えば20年前、ガンダムが映画上映されたときは初めてアニメ映画で観客の徹夜組が出たというのに。
オールナイトはなんの前置きもなく、いきなりTVのオープニングが始まった。たんたんと進行される30分アニメだが、回を追うにしたがって1話1話が長く感じられるようになる。話が濃くなる。
今回13話までの中で特筆すべき回は「戦場は荒野」「時間よ止まれ」
「戦場は荒野」はサイド7から地球へ逃げてきたホワイトベースが、敵の戦力圏内のグランドキャニオンを進行中、希望した難民を数名地上に下ろす話だ。追ってくるジオンに一時休戦を申し入れ、難民を輸送機で下ろすが、その輸送機には実はガンダムも入っていた。
ホワイトベースとガンダムで敵をはさみうちにする作戦があったのだ。
降りた難民のうちある親子が他の難民と別れ別な道を行く。途中まで偵察でついてきていたジオン軍の戦闘機は、その親子が気になって追いかけていく。ガンダムはガンダムで戦闘機が親子を襲うのではないかと追いかけていく。だが、戦闘機は親子に救援物資を下ろし、去っていった。ガンダムを操るアムロは戦闘機がガンダムに気づくな、気づくな、殺したくないんだと祈る。しかしガンダムの反射光に気づいた戦闘機は戻ってきてしまい、ガンダムに破壊される………
まあこのあとはザクも出てきて戦闘になっちゃうんだけど、撃ち落とされた戦闘機の兵士が生きていたときはほっとした。ガンダムなら絶対死んでる展開だろうと思ったからだ。負傷した兵士は救援物資を送った親子に助けられたりもする。
見てて思ったのは結局武器や軍などなければひとりひとりの人間に敵・味方などないのだということ。先ごろイラクでテロ行為で日本人が亡くなったというニュースがあったが、毎日毎日あそこでは市民が、そして熱意のある人々が、あるいは送りこまれて仕方なく駐在している兵士が死んでいる。でもテロ行為を行う人々も武器がなければ、大儀がなければただの気のいい人々なのだろう。当たり前のことなのだが、その当たり前のことを忘れてしまうのが闘いであり、戦争であり、憎しみなのだ。
「時間よ止まれ」は全く覚えてなかった、というかもしかしてみてなかったかも。
これもエピソード的な話で、出だしが前線で腐っているジオンの兵士から始まる。これが新鮮。ジオン軍の若い兵達はなんとか本国サイド3へ帰りたくてたまらない。でも帰るには何か手柄を立てなきゃならなくて、そこで彼らはガンダムの破壊を考える。彼らはガンダムをザクでおびき出し、あとはむきみで近づいて爆弾をとりつける。
アムロはむきみの彼らを撃てない。アムロが破壊するのはザクであり、戦闘機であり、彼はその中に人間がいるとは考えない。だからむきみで近づく兵を撃とうとすると手が震えてしまう。まあこの話の前にイセリナに「ガルマ様の仇!」とか言われて銃向けられたり、母親の目前で敵を撃って「そんな恐ろしい子に育てた覚えがない」と責められたりしたという伏線があるが、基本的にアムロは人を平気で殺せるような人間ではない。
で、ガンダムにとりつけられた爆弾は5つ。30分で爆発するので、ジオン兵たちは離れたところからそれが爆発するのを見守っている。そしてアムロがその爆弾をひとりで外そうとするのを面白がり、反面、期待したりしている。
4つまでは順調に外せたが、最後の一つがガンダムが地面に接している部分にあって、アムロは必死で土を掘り始める。それを犠牲者は少ないほうがいいと、HBから見守っていたクルーたちは、我慢できなくなり、泣きながら飛び出して、みんなでガンダムを動かし、爆弾を積んで車を走らせる。
結局爆弾は離れたところで爆発する。ジオン兵たちはがっかりしつつも爆弾をひとりで外したアムロに興味を持ち、民間人の振りをして顔をみにいく………
見終わった後、エンディングを見てたら脚本は富野監督だった。
そーか監督だからこんな好き勝手な話が作れたのか。と、納得。
こういうエピソードがはいるからこそ、ガンダムは他のロボットアニメと一線を画しているのだろう。